イルカに乗った人事マン

人は輝くSUN社員 ~舞台裏の熱い人事メモです!

交通費の矛盾

梅雨入りの発表を聞きながら、今日は晴天に恵まれて

うれしい気分の日曜日でした。

さて今回は、「通勤交通費」の支給について、考えてみたいと思います。

まずは、最近の交通費支給に関わる法改正の部分から触れておきますが、

ややこしいなと思うのであれば、後半の「交通費のここが矛盾だろぉ~?!」へ、

目線を飛ばしてもらってかまいませんーーーーー

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平成23年度税制改正により、マイカー通勤者の通勤手当非課税の上乗せ特例が廃止になりました。

★適用時期:平成24年1月1日以後に受けるべき通勤手当

 ■電車・バス通勤者の通勤手当

  経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合の通勤定期券など
  の金額です。
  ただし、最高限度額は、100,000円/月となっています。    


 □片道2km未満の場合               0円
 □片道2km以上10km未満の場合    4,100円
 □片道10km以上15km未満の場合   6,500円    
 □片道15km以上25km未満の場合  11,300円
 □片道25km以上35km未満の場合  16,100円
 □片道35km以上の場合         24,500円

[ 改正の内容 ]

現行の特例措置が廃止、すなわち運賃相当額が距離比例額を超える場合に、
運賃相当額(最高限度:月額10万円)までが非課税とされる措置が廃止されます。

これにより、マイカー・自転車利用通勤者の通勤手当の金額が距離比例額を超える場合には、
その距離比例額を超える金額については、所得税の課税の対象となります。

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【交通費のここが矛盾だろぉ~?!】

そこで、そもそも「通勤交通費」の何が矛盾してて、ヤバいのかっていうと

交通費という制度自体が、いまの時代にも

社員に対して公正に支給されている制度かという問題なんです。


例えば、家族親と同居している自宅通勤の【Aさん】は、宇都宮から新宿まで

新幹線定期で通勤しているとします。(定期代 1ヶ月8万5千円程度)

一方で、【Bさん】は、実家茨城から離れて、会社に近い都心で一人暮らしを始めました。

通勤の定期代は7千円程度で、家賃は9万円のワンルームに住み始めました。

この会社には、通常の場合には、とくに住宅手当や転居補助制度などはありません。

(地方転勤や出向勤務の場合は、赴任手当や転居手当がある事例は多い)


どちらも、同じ会社に勤務しながら、主任職について仕事をしています。

【Aさん】は通勤時間はおよそ1時間かかって、ほぼ、定時で出社退社をしています。

ふだん通勤時は、新幹線の座席は確保することができて、新聞など読みながら

快適に通勤ができています。

ときには、仕事帰りの新幹線の車内では、缶ビールを飲みながら、気分良く
家路についています。



そしてその時間帯に、【Bさん】は、業務が忙しい部署でもあることから、毎晩9時過ぎまで

仕事に熱心に取り組んでいます。残業時間としては、月あたり40時間ほどになります。


この2人の、給与支給明細から、何か矛盾が浮かんでくると思いませんか。

そうですね。交通費の実費支給って、正しいことなのかどうかと。

(もちろん、交通費額の上限規定がある場合は別)


【Aさん】  定時出勤退社の勤務が通例

  交通費は 9万5千円受け取り  (年間114万円なり)

  ※家賃は 両親・祖父母と同居で、とくに家族払いは任意)


【Bさん】  毎月40時間の残業 >管理職のために残業手当支給は対象外

  交通費は 月7千円受け取り  (年間8万4千円なり)

  家賃は 月9万円  (年間108万円支払う) ※住宅補助手当無し


通勤時間といっても、せいぜい片道あたり、1時間に対して、都内の通勤でも

30分以上はかかるので、大差はありません。


そこで、大きな矛盾は、交通費を年間100万円以上もらっている【Aさん】と

都内に一人暮らしをして、家賃を100万円以上払っている【Bさん】の所得格差です。

本来は、会社にとって、どちらの社員が大切であって、組織貢献をしていると

評価できるのか、明らかではないでしょうか?


年間比較して、お互いのプラスマイナスで200万円の違いに 評価として公正さはあるのでしょうか。

このまま、5年も10年も現状が継続する事実があれば、

一人暮らしの頑張り屋の独身者の将来において、 いつかは結婚して

家族を養う上でも、人生の判断に 大きな影響が出てくると考えられます。

ますます、仕事をすればするほど、独身の一人暮らしの管理職となって、

しっかりと貯蓄もできずに、疲れ果てるまで働き続けることにもなりかねません。

こういう人生を、本人は望んでいたとは思えません。




この放置型の「通勤交通費」は、雇用上の悪しき習慣なのかもしれないと思っています。

もともと、高度経済成長期において 「終身雇用・年功序列」を旗印にして

サラリーマンが、若いころのがむしゃらに働いて、郊外にマイホームを建てることが

一人前の証であって、それを目指していく社員を 会社が同意して支援するために

遠距離通勤の交通費も全額を支給することを、受け入れいたのではないでしょうか。


もはや、そういう時代背景でもないので、つじつまが合わないようになっていると

思います。

「過剰な待遇は、余剰な経費を生み出し、社員の慢心につながります」


その事例として、東京都内に住むのは嫌だから、わざと郊外の会社から離れた

街にで家賃の安い、バス通勤も必要な物件を探して、転居する若手社員もいます。

この生活スタイルを、あたまから上司が会社や否定する権利はどこにもありません。


ただ現行制度としては、1万円の定期代が、3万円に増えても、会社側は抑制できないのです。

本来は、個別に業務対価型で、賃金を評定するところに公平さがあるわけで、通勤距離や

家族構成など諸手当のバランスが高いままである会社も多いと聞きます。

それなら、もっと本給に含めて、妥当な業務対価の賃金設計をしていくように

方向づけをすれば、それぞれの世代の社員どうしの納得性が高まると思われます。


交通費支給は、どの会社でも当たり前のように支払っているから、自社だけが

支給を停止するとか、上限額を極端に低くすることは難しいというのは当然のことです。

既存の社員に対して、交通費の改定をするならば、時限措置も加えて、徐々に交通費規程を

変更していきながら、調整手当で対応することも方法かもしれません。


ある意味で、過去に支払っていた賃金額の低減にもなるので、「不利益変更」として

社員の反感を招くおそれがあります。

その点では、従業員代表との話し合いや、金額面で大きな影響のある社員とは

事前に相談をしていく対処は必要かと思われます。


公平で公正な、社員の評価のためには、人事制度の改善措置として、重要なポイントの

一つだと思われます。





余談ですが・・・・

もちろん、遠距離通勤だった社員が、いつのまにか都心に転居していて

従来どおりの通勤交通費を受け取っていたとすれば、

それは 明らかに 不正受給として 懲戒対象に該当します。

転居した時期に、遡って全額返済させることが必要になってきます。

その抑止効果のためにも、就業規則や賃金規程には、わざわざ当たり前の禁止事項を

明示しておくことが必要になります。



労務トラブルの予防の在り方として、文書で明記して抑えておくことと、労使相互の

納得感のある、事前説明や適正は手順が必要になりますね。

面倒ではあるのですが、社員どおしが気持ちよく仕事をしていくためには

舞台裏の「人事マン(ウーマン)」としては、勇気をもって動きをとっていくべきですね。



(さいごに お礼を)

長くなりましたが、拙い文章を最下行までお読みいただき、有難うございました。

また、内容についてご意見やご異見など、ありましたら、遠慮なくコメントくださいませ。